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結核院内(施設内)感染対策の手引き 平成26年版 結核は現代の病気です | いわき市役所

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結核院内(施設内)感染対策の手引き

平成

26

年版

平成

26

3

厚生労働省インフルエンザ等新興再興感染症研究事業

「結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究」

研究代表者

加藤誠也

研究協力者:(五十音順)

阿彦 忠之 山形県健康福祉部 医療政策監(兼)山形県衛生研究所 所長 猪狩 英俊 国立病院機構千葉東病院 呼吸器センター センター長 久保 秀一 千葉県長生健康福祉センター センター長(長生保健所 所長) 佐々木結花 公益財団法人結核予防会複十字病院 呼吸器センター 診療主幹 佐藤 厚子 公益財団法人結核予防会複十字病院 医療安全管理部 副部長

感染管理認定看護師

露口 一成 独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 臨床研究センター 感染症研究部長

徳永 修 独立行政法人国立病院機構南京都病院 小児科 医長

永田 容子 公益財団法人結核予防会結核研究所 対策支援部保健看護学科 科長 平山 隆則 公益財団法人結核予防会結核研究所 対策支援部医学企画科 科長 藤山 理世 神戸市中央区保健福祉部 兼 神戸市保健所 医務担当部長

吉田 道彦 東京都福祉保健局 医療政策部 医療安全課長 吉山 崇 公益財団法人結核予防会複十字病院 診療主幹

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1

策定にあたって

わが国の近年の結核罹患率は漸減傾向を示しており、2012年は人口10万対16.7になった。し かし、高齢者、社会経済的弱者、高まん延国出身者、免疫が低下した者など、結核感染・発病の ハイリスク者が大きな問題となっている。

医療機関等は高齢者等の結核罹患率が高い人と疾患等のため免疫学的に脆弱な人が集まる ため、感染が起こりやすい場と考えられる。高齢患者の症状は気づかれないことがあり、また、罹 患率の減少に伴う結核に対する関心の低下による診断の遅れ等が施設内感染の背景になって いる。

厚生労働省結核感染症課から公表された結核集団感染報告によると、感染性が高い塗抹陽性 患者は徐々に減少しているにも関わらず、集団感染は減少しておらず、特に2011年には医療施 設等での事例が著しく増加した。このため、厚生労働省インフルエンザ等新興再興感染症研究事 業「結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究」(研究代表者 加藤誠也)において、 本手引きを策定することになった。

わが国における最初の院内感染報告は1965年の新生児を巻き込んだ事例であったが、その後、 院内感染対策に関する多くの報告と検討が行われ、対策が確立されていった。1999年に「結核緊 急事態宣言」が発せられたのを受けて、厚生科学研究新興再興感染症研究事業の一環として「積 極的結核疫学調査緊急研究班」(班長:森亨)が設置され、その成果のひとつとして「結核院内感 染予防の手引き」が策定された。この手引きは医療機関、高齢者施設さらに矯正施設での結核感 染対策の基本的な事項がわかりやすくまとめられ、それぞれの現場で活用された。

以来10年以上が経過し、この間、結核予防法が感染症法に統合されるなど法令・制度の改正 があったのに加えて、菌検査や感染診断に関わる技術的な進歩があった。しかし、院内感染対策 に求められる基本的な事項に大きな違いはないと考えられることから、この「手引き」を参考に、結 核対策の専門家及び病院の感染制御の専門家の協力を得て、本篇の原案を策定し、関係機関・ 関係団体の意見をいただき修正した。

貴重な意見をお寄せいただいた、国公立大学附属病院感染対策協議会、私立医科大学病院 感染対策協議会、厚生労働省結核感染症課、厚生労働省精神・障害保健課、厚生労働省高齢者 支援課、法務省矯正局矯正医療管理官室に深謝を申し上げる。

本手引きが有効に活用され、わが国の院内感染の減少に役立てられることを祈念している。

平成26年3月

厚生労働省インフルエンザ等新興再興感染症研究事業 「結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究」

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2

- 目 次 -

第1部 結核の感染・発病と院内感染の現状……… 4

1.結核の感染・発病 ……… 4

(1)結核の感染 ……… 4

(2)結核の発病 ……… 4

2.結核院内感染の現状と要因……… 5

第2部 医療機関等における結核予防対策の基本的考え方……… 6

1.医療機関等における結核予防対策の基本的な要素 ……… 6

2.院内感染対策委員会/院内感染対策チーム……… 6

(1)院内感染対策委員会等における結核対策……… 6

(2)サーベイランス及び院内感染リスクの評価……… 7

(3)院内感染対策指針及びマニュアルの作成・運用……… 7

(4)職員教育……… 8

3.患者の早期発見……… 8

4.患者発生時の対応……… 10

(1)基本的流れ……… 10

(2)患者の転院の要否……… 10

(3)職員などの接触者健診……… 10

5.職員の健康管理……… 13

(1)採用時のIGRA……… 13

(2)採用時のBCG接種……… 13

(3)定期健康診断と日常の健康管理……… 13

(4)定期のIGRA検査 ……… 13

(5)職員の感染防止……… 14

6.構造設備と環境面での対策……… 15

(1)感染性結核患者の収容区域についてー空気感染隔離区域の設定… 15 (2)結核患者を収容しない病院における病室……… 15

(3)結核患者を収容しない病院の検査区域……… 15

(4)紫外線照射について……… 15

(5)患者の移動について……… 15

7.器物の消毒……… 16

(4)

3

第3部 医療機関等における予防対策の実際……… 17

1.結核病床を有しない一般医療機関での具体的対応……… 17

(1)一般外来……… 17

(2)一般病床……… 17

(3)高齢者、結核易発病者の多い病棟……… 18

(4)小児科関連施設での対応……… 18

(5)内視鏡検査・呼吸管理等の実施区域……… 18

(6)細菌検査室……… 18

(7)採痰室……… 19

(8)病理検査室(剖検室)……… 19

2.結核病床(棟)での具体的な対応……… 19

(1)結核病床(棟)での対応の基本的考え方……… 19

(2)確実な治療と多剤耐性結核の発生防止……… 20

(3)病室・病棟、検査室の運営……… 20

(4)職員の感染防止と患者指導……… 20

3.精神病棟での具体的な対応……… 21

(1)精神病棟における結核の特徴と対応の基本的考え方……… 21

(2)患者の早期発見……… 21

(3)組織的取り組み……… 22

(4)保健所との連携……… 22

4.矯正施設での対応……… 22

(1)患者の早期発見……… 22

(2)患者発見時の対応……… 23

(3)保健所との連携……… 23

5.高齢者施設での対応……… 23

(1)基本的考え方……… 23

(2)患者の早期発見……… 23

(3)組織的取り組み……… 24

(4)職員の健康管理……… 24

(5)保健所との連携……… 25

6.その他の入所施設での対応……… 25

7.通所施設での対応……… 25

参考文献……… 26

(付録) 1.結核症の診断手順……… 28

2.結核に関する諸手続と公費負担申請……… 30

3.院内(施設内)感染の場合における保健所の対応……… 31

(5)

4

第1部 結核の感染・発病と院内感染の現状

1.結核の感染・発病

(1)結核の感染

・ 結核の感染は、結核菌を排菌する患者からの咳などで飛散し、空中に浮遊する結核菌を含 んだ感染性飛沫(飛沫核)を別の人が吸入することにより起こる。一般的には、喀痰の結核 菌塗抹検査で陽性の肺結核、咽頭・喉頭結核、気管・気管支結核の患者が感染源となる。特 に、喀痰塗抹陽性で咳が激しい場合は感染性が高い

1)

。しかし、有効な化学療法を開始すれ ば、喀痰の中の結核菌量は急速に減少し、咳の回数が減り、その激しさも緩和されるので、 感染性は急速に低下する。

・ 結核の感染が問題になるのは主に結核に感染を受けていない人である。BCG接種を受けて ツベルクリン反応検査(以下、「ツ反」)が陽性の反応を示していても、結核菌に未感染であれ ば感染を受ける。既感染者が再度感染を受けてもそれによる発病はこれまでは問題になら ないとされてきた。しかし、HIV感染をはじめとする免疫能に影響を与える合併症のある患者 や体力の低下した高齢者など細胞性免疫の減弱した人については、そのような「外来性再感 染発病」が起こりうることが分子疫学研究によって明らかになっており、十分な注意が必要で ある

2)

(2)結核の発病

・ 結核に感染した者のうち、BCG未接種者においては、その後生涯を通して約10%が感染性 の結核を発病するといわれているが、より軽症の結核も含めれば発病率は30%程度になる と考えられている

3)

。しかし、BCG既接種者の場合には発病率はこれよりも低くなる

4)

・ BCG未接種者が感染した場合には、2か月くらいでツ反、あるいはインターフェロンγ遊離試 験(Interferon gamma release assay、以下 IGRA)が陽転し、発病する場合には、この頃から肺 門リンパ節結核、胸膜炎、粟粒結核など、様々な結核の病態が発生する。BCG既接種者で は発病はやや遅れ、感染後4~5か月以降となることが多い。このようにして発病は初感染5 ~12か月が多く、続く1年くらいはこの期間に次いで高い発病率を示す

4)

表1.結核の感染と発病のポイント 結核の感染は空気感染(飛沫核感染ともいう)

咳の激しい喀痰塗抹検査陽性患者では特に注意

結核に感染した者の中でBCG未接種者の場合、発病頻度は約10%

BCG既接種者が感染した場合、発病は5か月以降が多い。

(6)

5

2.結核院内感染の現状と要因

・ 2012年にわが国において発生した2万人を越える新規結核患者の中で、約40%が塗抹検査 陽性、約25%が塗抹検査陰性で培養または核酸増幅法検査で陽性の肺結核患者であり、こ れら菌陽性患者(以下、喀痰の結核菌塗抹、培養、または核酸増幅法検査で陽性を「菌陽性」 とする。)の58%は咳などを訴えて医療機関を受診して発見された。その中の約4分の1は医 療機関を初めて受診してから診断されるまでに1か月以上かかっている

5)

。このように日本で は多くの診断のついていない菌陽性結核患者が医療機関を受診しており、ここに結核の院 内感染対策が必要となる理由がある。他に、医療施設ではもともと免疫抑制状態の患者が 多いこと、剖検や咳を誘発する処置、結核菌検査のような業務があることなども、問題の基 礎として存在している。

6)

・ わが国で最初に報告された院内集団感染は、1965年に発生した東京の某産院での事例であ るが、その後1980年代に 入ってから発生が増加し、2000年以降も年によって多少の増減が あるが持続している

7)

。結核がまん延していた時代よりも、罹患率が低下してから医療機関で の結核集団感染が増加するのは表2のような理由によると考えられる

6)

表2.わが国における結核院内感染増加の要因

 高齢者を中心に入院後に塗抹陽性と診断される例が多くみられる。

 若い医療従事者の大半が結核未感染である。

 結核に対する関心の低下から、発見が遅れる場合がある。(患者の受診の遅れと医 師の診断の遅れ)

 施設の構造や設備は密閉された空間が多くなり、感染防止対策の観点から適してい ない場合がある。

 気管支鏡検査、気管内挿管や気管切開、ネ ブライザー、痰の吸引、胃管の挿入など 咳を誘発する処置が増加した。

・ また、高齢者施設などで、十分な一般医療面の健康管理が得られない場合の施設内感染が しばしば問題になっている。

・ 医療機関の職員別に比較検討した成績をみると、看護職員の場合、罹患率の相対危険度は 一般女性に比し3-4倍程度であった

8)

。年齢別にみると、若い人ほどこの相対危険度が高かっ た。また結核菌を取り扱う臨床検査技師では看護師よりさらに高い相対危険度であると推定 される

9)

(7)

6

第2部 医療機関等における結核予防対策の基本的考え方

1.医療機関等における結核予防対策の基本的な要素

・ 医療機関は、結核患者を含め様々な病気の患者や、医療上や社会的な背景を持つ人々が 集まるところであり、結核が空気感染という感染経路であることから、院内感染対策は多角 的・総合的に実施していく必要がある。基本的な対策としては、結核菌の①除去、②密度の 低下、③吸入防止の3点が重要であるが、さらに感染を受けた人の④発病予防と⑤早期発 見を加えて万全を期すべきである(表3)

10)

表3.結核院内感染対策の基本的な5要素

 結核菌の除去…早期発見、一般患者等との分離、化学療法

 結核菌の密度の低下…換気、採痰時の注意、紫外線照射、患者のサージカルマ

スク着用

 吸入結核菌量の減少…職員のマスク(N95型マスク)

 発病の予防…BCG接種(乳幼児等)、潜在性結核感染症治療

 発病の早期発見…定期健診、有症状時の早期受診

 結核の院内感染対策は、広い範囲、多くの項目にわたる総合的な対策なので、まず全体像

を理解し組織的に行う必要がある。感染のリスクは同じ病院内でも職種はもとより病棟や区 域によって大きく異なる。これらは病院や診療所によって異なる可能性があるので、それぞれ の医療機関での検討が必要である。

 本手引きにおいて対象とする医療機関(施設)の範囲は極めて多岐にわたるため、上記5要

素を束ねる横断的な課題である院内感染対策委員会などの組織・研修・マニュアルの作成な どの組織的対応について記載し、次いで、患者の早期発見についての課題、患者発生時の 対応、職員の定期の健康管理、構造設備や環境面での対策、職員のN95型マスクなどの具 体的な対策を盛り込んだ。各々の医療機関(施設)の実状に応じて、必要な部分を参考にし ていただきたい。また総合的な対策としては、まとめである表13を参照されたい。

2.院内感染対策委員会/感染対策チーム

(1)院内感染対策委員会等における結核対策

・ 医療施設では感染対策の体制として感染対策委員会(Infection Control Committee: ICC)と感 染対策チーム(Infection Control Team: ICT)の設置が求められており、結核の院内感染対策 に関しても、対策を立案し、各部署での実施を指導・監督し、実施状況の評価を行う

11)

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7

・ ICCにおいては、結核の感染対策の責任者を決め、呼吸器疾患を専門とする医師を加えるこ とが望ましい。

・ 保健所との連携もICTの役割である。保健所の担当部署の電話番号などの連絡方法も予め 確認しておく。

表4.感染対策委員会/感染対策チームの役割 ・院内感染リスクの評価

・院内感染対策指針及びマニュアルの作成、運用 ・職員教育

・構造設備と環境面の対策の立案、実施 ・院内感染対策の総合評価

・その他

(2)サーベイランス及び院内感染リスクの評価

・ わが国では、どの病院にも結核患者が受診する可能性があり、結核病床を有しない一般医 療機関でも、外来や病棟で結核患者が診断されることがある。

・ 医療機関内で結核患者が発生した場合には直ちにICTに報告する体制を確立しておくこと が必要である。この場合、単に主治医からの連絡のみならず、塗抹・培養・核酸増幅法検査 の結果が判明し次第、細菌検査室などから迅速に主治医及びICTに連絡されるような体制 を構築することも重要である。

・ ICTは発生報告をもとに医療機関の結核感染リスクの評価を行う。前年1年間に病院内で発 生し、または診断された塗抹陽性(又は培養・核酸増幅法での陽性)結核患者数の集計を定 期的に行う(これには受診中の患者および職員のいずれも含む)。そしてこれらの患者の診 断までの過程の分析を行う。情報源としては、細菌検査室の菌情報および、転院した患者に ついての他院もしくは保健所から入手した情報を加える。さらに、これらの患者について、症 例ごとに初診から診断までの受診回数、日数などを調査し、症例報告を作成しておくことは、 院内感染対策の上で極めて大切である。なお、非結核性抗酸菌症であることが判明した者 は対象から除外するが、 結核と非結核性抗酸菌症との合併があ り うる ことに も注意を要す る。

表5.院内感染リスクの評価ポイント ・前年1年間に診断された結核患者数(結核菌陽性、職員を含む)

・診断された結核患者の初診から診断までの過程の分析(受診回数、日数等)

(3)院内感染対策指針及びマニュアルの作成・運用

・ 本手引き等を参考にされて、各医療機関の具体的状況に即した「院内感染対策マニュアル」 を策定することは極めて重要であり、ICTの重要な役割である。ICTにおいては、その指針及 びマニュアルの運用の指導・監督も忘れてはならない役割である。

(9)

8

表6.院内における対策のポイント

 外来、病棟における結核疑い例の選別(画像診断、菌検査)

 医療機関の実状に応じた優先診療の検討

 結核と診断された者又は疑いのある者への対応(サージカルマスクの着 用、一般患者との隔離など)

 他疾患で入院中の者で結核合併が発見された場合の対応(届出、隔離、 転院、接触者健診など)

 細菌検査室、気管支鏡検査室、病理解剖室等での注意

 その他

(4)職員教育

・ 最近では、結核に関する十分な知識を有しないままに医療機関に勤務する職員もいることか ら、ICCのメンバーだけではなく、結核医療に関わっている医師・看護師や外来等で患者に接 する機会のある事務職員、さらに、非正規職員、委託業者、ボランティア、学生も含め、結核 に関する教育を行うことは、ICTの重要な役割である。

表7.結核に関する職員教育のポイント

 結核の疫学と基本的予防方法

 結核感染の起こり方(空気感染、治療に より排菌が止まっ た服薬中の患者からは感染しないこと)

 感染源としての危険度の大小

 感染と発病(発病までの期間、発病率、LTBI治療)

 検査法とその結果の解釈(ツ反/ IGRA、結核菌検査等)

 感染防止方法(マスクの意義)

 BCG接種の発病防止効果と限界

 感染防止マスク(N95型マスク)の着用訓練

 差別・偏見の排除

3.患者の早期発見

・ 結核院内感染の中には、入院又は外来受診中の患者の結核発病の診断が遅れたことによ り発生・拡大したものが少なくない。したがって、患者の結核の早期発見は、院内感染対策の 最も基本的かつ有効な方策である。

・ 第一に、咳や痰が2週間以上続くような場合には、まず患者のサージカルマスク着用を確認 したうえで、胸部X線検査及び結核菌検査(3日間連続検痰が望ましい)を確実に実施するこ とが重要である。さらに医療機関の実状に応じて、結核患者が受診する可能性がある救急を 含めて外来での一時的な隔離や優先診察制度の導入の可能性についても検討することが 望ましい。

(10)

9

訴とはならず、発熱を主訴として入院し検査したら胸部X線検査で異常影が発見され、結核 が原因であった、という例も多い。発熱を有して入院している者については、胸部X線検査を 行うことが必要である。また、結核の発生が特に多い地域においては、全ての入院予定患者 に胸部X線検査を行うことを考慮してよい。

・ 第三に、結核の既往のある者、胸部X線検査で既往所見が認められる者、免疫抑制状態に ある患者(例えば、生物学的製剤・副腎皮質ホルモン剤・抗癌剤・その他の免疫抑制剤など の投与を受けている患者、あるいはHIV/AIDS患者、腎不全または血液透析中の患者、コン トロール不良な糖尿病の患者など)や結核発病のリスクが高いとされる者

8)

を把握し、発病し ている可能性を念頭に、咳や痰のみならず、発熱、体重減少、全身倦怠など一般状態にも十 分に注意しながら、診療・看護・介護に当たる必要がある。

・ 第四に胸部X線検査で結核を除外することは難しい。肺炎所見のある入院患者については、

3日間連続の喀痰結核菌検査を行うことが必要である。肺炎として治療しても経過が思わしく

ない場合、画像上結核の可能性を示唆する所見がある場合は、喀痰の塗抹・培養検査を再 度行い、核酸増幅法を併用する。喀痰を容易に出せない場合はネブライザーを用いて誘発を 試み、それでも出ない場合には胃液検査を併用し、良質の検体を検査に提出する。また、喉 頭・気管・気管支結核では、必ずしも胸部X線検査に所見がないことがあるので、2週間以上 咳・痰が持続するなど、これらを疑う所見がある場合は、胸部X線検査の所見に関わらず、結 核菌検査を行う。

・ 第五に、検査室又は検査外注先からの菌陽性検査結果を直ちに主治医に報告するシステム を各医療機関で定め、治療や対応が迅速に開始される体制を整えておくことが重要である。 また、非常勤医師が診察した患者や主治医が不在の間に検査結果が得られた場合にも対応 できる体制を定めておく必要がある。また一般医療機関では,塗抹陽性結核と診断された患 者を結核専門医療機関へ転送した後も念のため培養を続け、転送先の医療機関では培養が 得られなかった場合でも薬剤感受性などの検査が必要になった場合に応えられるようにして おくことが重要である。

・ なお、免疫抑制状態で結核既感染と考えられる患者にはイソニアジド(以下、INH)等による 潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection: LTBI)治療の検討が必要となるが、その際に は既に活動性の結核が発病していないことを十分に確認することも重要である。

表8.患者の早期発見のポイント

 結核発病の危険因子の把握

 結核発病の危険因子を有する患者については結核を念頭においての 検査を実施(特に喀痰塗抹検査)

 咳・痰が続く(2週間以上)患者等には、結核菌検査を実施

 咳・痰の明らかでない結核発病患者があることにも注意

(11)

10

4.患者発生時の対応

(1)基本的流れ

・ 医療機関で診療中の患者が結核に罹患していることが明らかになった場合には、表9のよう な措置をとる必要がある。治療は排菌量を減少させるので、診断がつき次第開始する。治療 に不慣れな場合には専門機関に相談する。患者発生時には感染症法第12条の規定に基づ いて肺結核、肺外結核に関わらず、最寄りの保健所に直ちに届け出る必要があり、接触者へ の対応(接触者健診を含む)について保健所と緊密な連携をとる。

表9.患者発生時の対応のポイント

 本人、家族への説明。患者には必要に応じてサージカルマスクの着用。

 診断がつき次第、治療を開始する。

 院内感染対策委員会に報告する。

 患者の排菌状況を踏まえて、入院先を決定する。

 発生届けを保健所に直ちに提出し、接触者健診について保健所と協議する。

 職員、他の患者への感染の可能性及び院内の感染源について検討する。

 接触者健診を実施し、必要に応じてその後1~2年間程度の経過観察を行う。(初発 患者と接触のあった他の患者や退院後の患者、退職した職員、若年者など、発病リ スクの大きい患者などについては、保健所と連携し、経過観察を確実に行う。)

・ 図1に入院患者から結核菌陽性患者(喀痰の塗抹、培養、または核酸増幅法検査で陽性)が 発生した場合の対応策の流れを提示したので、参考にされたい。

(2)患者の転院の要否

・ 喀痰の結核菌塗抹検査で陽性の患者は、原則として結核病床に入院することとなる。しかし、 他に重篤な疾患を持っている患者の場合には移送・転院が困難なこともあり、このような緊急 その他やむを得ない理由の場合には他への感染に配慮しつつ、もとの病院に留めることもあ り得る。この場合には患者発生届けを提出することはもちろん、その事情について所管の保 健所に報告・協議しなければならない。

・ なお、このような結核病床以外の病床における入院治療に際しても、保健所は緊急その他や むを得ない理由による入院勧告を行うことができる。この場合、感染症法第42条(緊急時の 医療に係る特例)の規定により、同37条による場合と同様の公費負担の対象となることがあ るので保健所と相談する。

(3)職員などの接触者健診

12)

・ 職員などへの接触者健診をはじめとする事後措置の要否、範囲、方法、時期の決定は、所 轄の保健所と病院側との協議のもとで感染のリスクの大きさ等に応じて決められる。

(12)

11

上で、LTBI治療を勧める。なおこのIGRAは初発患者との最終接触後概ね2~3か月後に行う ものとする。ただし初発患者への曝露が2か月以上にわたるような場合には、診断直後及び その2か月後にも検査を行う必要がある。

・ 保健所は感染症法第17条に基づき、都道府県知事(実際は委任を受けている保健所長)か らの勧告によって接触者健診を実施するが、医療機関は「院内感染対策」の観点から、医療 法等に基づき、主体的に原因調査や感染拡大防止(健診を含む)に取り組む必要があること から、自らの責任で職員等の接触者健診を実施する方法もある。この場合、保健所は医療機 関が実施した健診結果について同法第15条に基づいて調査できる。調査の結果、健診が不 十分であると判断した場合には,さらなる健診の実施を要請するか,あるいは同法第17条に 基づき保健所が健診を実施する

12)。

・ IGRAによるベースライン値を持たない者には、初発患者の感染性期間(他人に感染させる 可能性のある期間)における接触期間が2週間以内の場合は初発患者の診断直後のIGRA をベースラインの代用にできる。

・ 当初設定した健診対象者中に感染の可能性が高い者が多い場合には、健診の対象範囲を 拡大する。また、患者との最終接触の2~3か月後に実施したIGRAの陽性率が非常に高く、 結核感染率が極めて高いと判断された場合には、IGRAの再検査を最終接触の6か月後に も実施することが望ましい。

・ IGRAはBCG接種の影響を受けないことから感染の有無の判定の精度はツ反に比較して高 いと考えられるが、感度は80-90%とされていることから偽陰性が生ずる可能性があり、「感染 あり」と判定されない者でも後に発病する場合もあ ることを対象者に十分理解させる必要が ある。

・ 同時に、IGRAで陰性であった者以外は年齢にかかわらず胸部X線撮影を行う。ただし、既に 発病者が認められている場合や感染者が極めて多い場合にはIGRAの結果に関わらず、胸 部X線検査を実施してもよい。定期の検査の時期及び感染から発病までの期間を勘案して検 査の時期と実施間隔を決める。

(13)

12

図1.入院患者から結核菌陽性患者が発生した場合の対応策の流れ

結核患者発生

対応方針決定に時間がかかる 場合は個室*に転室

院内感染対策委員会に報告 (咳などの症状出現時期、排菌状況等)

診断がついたら直ちに治療を開始

**)

(直ちに) 保健所に発生届 -感染症法第12条-

保健所と対応方針協議

(患者の症状等でやむを得ない場合) (一般的な場合)

院内で対応の場合 転院の場合

個室*へ転室 転院先への連絡 転院方法の検討

感染対策

・患者・家族への指導 転院 ・職員へ方針の伝達

保健所と事後措置の要否検討

要 否

接触者健康診断 終了

・IGRA(ツ反) ・胸部X線検査 (時期、範囲)

*:独立した換気系統を持つ陰圧病室が望ましい

(14)

13

5.職員の健康管理

(1)採用時のIGRA

・ 新規採用職員に 対して 、 採用時点( ベー ス ライン ) の結核感染歴の有無を把握す るた めに

IGRAの実施が推奨されている。IGRAの結果が陽性であった者で、2年以内に感染した可能 性が高いと考えられる場合にはLTBIとして治療を行う

11)

。なお、治療方法については、「潜在 性結核感染症治療指針」(日本結核病学会予防委員会・治療委員会)

8)

を参照する。

・ 既に勤務している職員に対してもIGRAを実施してベースラインの検査結果を記録しておくと、 結核院内感染が疑われる事例が発生した場合に新たな感染の有無を判断する際に極めて 有用な情報となる

11)

(2)採用時のBCG接種

・ わが国ではBCG接種が広く行われており 、BCG接種歴がある者に対して再接種を行うこと の有効性は疑問視されている

13)

・ BCG接種歴がなく、IGRAが陰性の場合には、当該医療機関等における結核感染のリスクの 程度、さらに患者発生時に医療機関等として定めている対策の内容などに基づいてBCG接 種の検討を行う。具体的には、感染対策が行われているにもかかわらず結核感染が起こっ ている職場(結核病床を有する病棟など)では、BCG接種歴を聴取し、BCG接種を考慮すべ きである

11)

・ BCG接種に関して重要なことは、接種の予防効果は万全ではなく、効果の持続期間は10-15 年程度とされていることである

14)

。接種をしていても、感染防止の措置や患者発生時の対応 が少しでもおろそかになるようなことがあってはならない。

(3)定期健康診断と日常の健康管理

・ 医療従事者は感染症法第53条の2に基づく定期健康診断の受診が義務付けられている。従 って、職員には職種を問わず定期健康診断を確実に受診させる。職員の健診受診の確保、 及びその結果の確認については、院内感染対策委員会が指導と監督を行うべきである。特 に「要精検」と判定された者が精検を受診し、その結果結核として感染性がないことを確認す ることは重要である。

・ 年1回の健康診断だけで全ての結核が早期に発見されることはないので、職員は日常の健 康管理に留意し、特に結核を疑わせる症状のある者は、医療従事者として患者等に感染を 拡大させる危険性の高いといった意味での高危険群(デインジャーグループ)であるとの自覚 のもと、早期に診察・検査を受けることが重要である。

(4)定期のIGRA検査

(15)

14

QFTにおける「陽転」の基準に関しては、表10のように諸説がある。

表10 QFTにおける陽転の基準案

基準 著者 年 文献

0.35未満から0.7以上 Pai M et al. 2006 15)

0.20未満から0.50超 Pai M et al. 2009 16)

0.20未満から0.70以上 Schablon A et al 2010 17)

0.20未満から0.70以上 Ringhausen FC et al 2011 18)

(5)職員の感染防止

・ 結核未感染の職員が感染性の飛沫核を吸入しないようにするための個人予防的な手段は

N95型マスク(「N95型レスピレーター」ともいう)と呼ばれるマスクを使用することである。治療

開始後間もない排菌患者の診療・看護にあたる場合はもとより、結核が疑われる患者の気管 支鏡検査や採痰指導、喀痰誘発や吸引等の処置を行うときもこのマスクを着用すべきである。 見舞客など患者の面会者についても同様である。(患者が着用するマスクは飛沫の飛散の 防止が目的であるので、サージカルマスクが適当である)

・ 職員のN95型マスクの着用については、使用上の注意を遵守し、定期的にフィットテストを行 い、着用ごとに ユーザーシ ールチェック

を行って適正に着用されていることを確認すること が重要である。但し、このマスクを着用してさえいれば確実に安全ということではないことも十 分に認識しておく必要がある。

※ユーザーシールチェック:N95型マスクが適正に装着されているかを確認するために、両手 でマスクを完全に覆うようにして、息を吸ったり吐いたりする。鼻の周りから息が漏れているよ うなら、両手で鼻の金具を調整する。マスクの周りから息が漏れているようであれば、頭側部 に沿ってゴムひもを調整する。いずれの場合も調整後に改めてユーザーシールチェックをし て、息が漏れなくなったことを確認する。

・ なお、N95型マスクはフィットテストを実施し適正な着用を確認した上で長時間装着していると、 呼吸が苦しくなる。従って、菌陽性の患者の部屋に入るとき、結核の可能性のある患者の気 管支鏡検査の場合等、必要な時にのみ着用する。

表11.職員の健康管理のポイント

 採用時にはIGRAを実施し、ベースラインデータとして記録する。

 BCG未接種でIGRA陰性者に対するBCG接種の要否について検討をする(感染 リスクが特に大きい場合)

 定期健康診断の確実な受診

 普段の健康管理(特に長引く咳に注意)

 必要な場合にN95型マスクの着用

(16)

15

6.構造設備と環境面での対策

(1)感染性結核患者の収容区域についてー空気感染隔離区域の設定

・ 結核病床等の感染性結核患者の収容区域が「結核病棟」として建築上独立していない場合 には、他の区域からドア等で遮断され、この区域の空気が他の区域に流出することのないよ うにしなければならない。

・ 空調はこの区域専用の独立した方式にして、新鮮な外気若しくはHEPAフィルターを介して清 浄にした空気で十分な換気(1時間に12回の交換)を行うことが重要である

19)

。この区域は、 その他の区域に対して陰圧化が望ましく、差圧計や煙管法などでモニターする必要がある。

HEPAフィルター等の維持・管理にも十分な配慮が求められる。

・ 病室等の構造及び設備については、厚生省保健医療局長通知(平成4年12月10日、健医発 第1415号, 平成19年3月29日健発第0329011号改正)別添「結核患者収容モデル事業実施要 領」に示された基準に準じた配慮をすることが望まれる。

(2)結核患者を収容しない病院における病室

・ 結核患者を収容する病院(結核病床、モデル病床)以外の病院においても、発生した結核患 者が転院するまでの一時的な対応や状態が重篤であるために転院できない場合を考慮して、 空気感染隔離病室を設置することが望ましい。

(3)結核患者を収容しない病院の検査区域

・ 結核患者の収容を行わない病院であっても、気管支鏡検査、採痰、喀痰吸引や吸入などを 行う部屋や区域については上記と同様の配慮をすることが望まれる。特に外来での採痰の ためには、そのための個室(採痰室)を設けることが望ましいが、場合によっては簡便な採痰 ブースの利用なども効果的である。

(4)紫外線照射について

・ 紫外線照射は基本的には結核菌の殺菌に有効である。しかし、その殺菌効果は照射してい る部分に限られており、種々の要因の影響を受けやすいので、換気や部屋の陰圧化に代わ るものではなく、あくまで補助的な手段とされている。患者や職員の目や皮膚に対する健康 被害の予防に十分注意し、かつ正しい維持管理の下に使用することが勧められる。

(5)患者の移動について

・ 結核病床を有する施設では、結核患者と他の患者の動線ができるだけ交差することがない ように、また、エレベーターを同時に使用することがないような使用方法について、配慮する ことが望まれる。

(17)

16

表12.構造設備、環境面での対策のポイント

 感染性結核患者の収容区域の空気が他の区域に流出しないように

 換気は十分に(12回/時間)

 気管支鏡検査、採痰等を行う部屋も空気の流出に注意が必要

 紫外線照射装置は基本的には有効だが、補助的手段である

 設備の維持・管理を確実に実施する。

7.器物の消毒

汚染された可能性のある診療器具等の感染防止上の扱いは以下のように行う。

・ 結核菌であるために特別な消毒法を必要とするわけではない。

・ 他の患者の無菌の体内部位に直接接触する器具(手術器具など)には滅菌操作を行う。患 者の粘膜に接触する器具(気管支鏡、喉頭鏡、挿管チューブなど)は、セミクリティカル器具

(semi-critical instruments)に分類されているので、湿式低温殺菌法、化学消毒、または加熱 による「高レベル消毒」

*)

で処理する必要がある。(*:Spauldingの処理分類による

20)

・ 患者の健常皮膚に触れるだけの器物(リネン、電話器等)や部屋の壁などについては 通常 の洗浄・清拭のみでよい。結核患者が用いた食器についても同様である。

8.感染性患者の搬送にかかる感染防止

・ 感染性の結核及びその疑いのある患者の自動車等による搬送に関しては、原則としてこれ らの患者が結核病床に収容されている場合と同様の感染防止上の配慮が必要である。これ らの業務に携わる職員についても同様の病院職員に準ずる健康管理が必要である。

・ 搬送に用いた自動車等の内部、器具等の扱いについては上記7の記載に準ずる。

表13.医療機関等における基本的な結核予防対策のまとめ

 感染対策委員会(ICC)及び感染対策チーム(ICT)による組織的対応

 院内感染リスクの評価(過去1年間の結核患者診断数、初診から診断まで の分析)

 院内感染対策指針/マニュアルの作成・運用

 結核の予防、感染対策、診断、治療等についての職員教育

 医療機関等の実状に応じた優先診療の方法の検討

 施設の構造・設備の整備・維持管理(結核患者を収容できる個室の確保、 陰圧・HEPAフィルターの維持・管理等)

 必要な場合にN95型マスクの着用

 職員の定期健康診断受診の励行

(18)

17

第3部 医療機関等における予防対策の実際

1.結核病床を有しない一般医療機関での具体的対応

ここでは診断のついていない、あるいは治療されていない結核患者からの感染を防止すること が最大の課題である。診療科や区域に応じて、以下のような体制の整備が重要である。

(1)一般外来

・ 結核(その他の空気感染を起こす疾患も同様)やその疑いのある患者が診療を受ける部屋 は陰圧独立換気にするなど、他者への菌暴露を防止でき る構造・設備を有することが望ま しい。診察後には十分な換気を行うなどの注意も必要である。

・ 結核が疑われる患者の選別と他の一般患者と区別した対応が重要である。医師の診察に先 立つ段階で、結核の疑いで紹介されてきた患者はもとより、激しい咳をしている患者、2週間 以上にわたって咳が続くような患者がいる場合に は、患者の申し出および担当の看護師等 の判断により、患者にはサージカルマスクをさせるか、咳をする時にはハンカチやティッシュ で口元を覆うよう指導する(咳エチケット)。また、その患者を一般の待合区域から感染対策 のなされた特定の区域に隔離し、診療も優先的に速やかに行うような体制を実施することが 望ましい。

・ また、結核患者及び疑い患者の情報を関係する医療スタッフと共有することが感染防止対策 に重要である。

・ 感染源として特に危険性が大きい患者には、転院や入院の指示などをする場合にも、そのこ とを明確に記載し、関係者の注意を喚起する。

・ 外来で結核患者が診断された場合の対応方法について、①移送・搬送の基準と具体的手順、 ②患者への診療や処遇内容、③保健所への届け出、等について各医療機関が策定するマ ニュアルに明確かつ具体的に記載しておくことが重要である。

(2)一般病床

・ 患者発生に際しての全般的な対応については、第2部に記載したとおりである。ここでは入院 患者の一時的な収容等について補足する。

・ 結核と診断された患者、あるいは結核が疑われる患者は、直ちに一般患者と別の病室に収 容した上で、感染性に関する評価(喀痰塗抹検査を中心に)を行う。菌陽性患者が収容され ていた病室は可能な限りの換気を行う。部屋の器物(例:床頭台、電話など)は通常の清拭で よい。

(19)

18 (3)高齢者、結核易発病者の多い病棟

・ 高齢者は結核既感染であることが多いことから、入院中に結核を発病することも当然ある。 また、HIV、臓器移植、血液透析や生物学的製剤・抗癌剤・副腎皮質ホルモン剤などの免疫 抑制作用がある薬剤を投与した場合には結核の発病リスクが高くなる。このような患者の診 療にあたっては、結核発病の可能性について十分配意しておくことが必要である。このため 患者には入院時に胸部X線検査を行い、何らかの異常所見があれば、早朝痰を含む3日連 続の喀痰結核菌塗抹・培養検査・核酸増幅法など菌を検出する検査を実施する。

・ 原疾患のために結核の専門医療機関へ転院することが難しいこともあるが、このため、一般 医療機関においても、このような患者を一時的に収容するための病室を備えることが望まれ る。なお、このような緊急その他やむを得ない理由があるときに、感染性の患者を結核病床 以外の病床へ入院させる場合も、法第19条に基づく入院勧告の対象となり、医療費は法第

42条の規定により法第37条による場合と同様の公費負担が認められることがあるので保健

所と相談する。

(4)小児科関連施設での対応

・ BCG未接種の新生児や乳幼児、副腎皮質ホルモン剤使用等の免疫抑制状態の患者などが 多い小児科関連施設では、患者に感染が起これば早期に粟粒結核や結核性髄膜炎などの 重篤な病型の結核の発病リスクが大きいことに鑑みて、特に慎重かつ迅速な対応が必要で ある。

(5)内視鏡検査・呼吸管理等の実施区域

・ 気管支鏡検査や気管内挿管を実施する場合や人工呼吸装置を用いる場合においては、患 者が結核に罹患している可能性も想定しておくことが重要である。

・ 上記のような部屋・区域では、操作により咳が誘発されて結核の感染性飛沫が生じる危険性 が大きいため、確定診断の前で結核の可能性を否定できない患者の検査・処置に従事する 職員はN95型マスクを着用する。特に、気管支鏡検査室は独立した空調を持つか、もしくは

HEPAフィルターを設置することが重要である。

・ 結核の患者が気管内挿管されている場合の喀痰の吸引においては閉鎖式システムを用いる 必要がある。(結核の可能性がある患者の場合にもこれを用いることが望ましい。)

(6)細菌検査室

・ 細菌検査室では、結核菌を含む検査材料の磨砕や振とう、ピペット操作、白金耳の直火滅菌 などに際して発生する飛沫で菌が飛散するおそれがあるので、これらの操作は安全キャビネ ット内で行うことが重要である。

(20)

19

(7)採痰室

・ 外来で結核菌検査のために痰を提出させるためには、採痰室(専用の個室を準備できなけ ればブース)を用いる。

・ 採痰室は、独立の空調・換気系統や殺菌灯を設けること等により、結核以外の患者が使用し ても感染を受けることのないよう、また採痰室の空気が外の区域を汚染することのないように 設計、運用されることが重要である。

(8)病理検査室(剖検室)

・ 病理解剖室は、医療機関の中でも結核感染のリスクが高い区域の一つである。生前に結核 の診断のついていない遺体を無防備で扱うことが多いからである。したがって以下のような 体制を整備しておくことが重要である。

表14.病理検査室における留意事項

 N95型マスクを着用する

 空調の気流は解剖台の上から下へ流れるように設計する

 肺など摘出臓器は細菌学的検査検体を採取した後は速やかにホルマ リンで十分に固定・滅菌する

 電動鋸には覆いをかけて広範な飛沫の飛散を防ぐ

 薄切切片の作成は感染防止用装置を用いることが望ましい

 剖検結果によって患者が結核を発病していたことがはじめて診断されることがある。 診断し

た医師は感染症法第12条に基づき、患 者 が 結 核 に よ り 死 亡 し た 又 は 死 亡 し た と 疑 わ れ る 場 合 に 保健所に直ちに発生届を提出しなければならないとされているが、感染拡大防止を 目的とした接触者健診などの措置を適正に実施するため、結核と診断された全ての患者に ついて保健所に通報することが望ましい。

表15.結核病床を有しない一般医療機関での留意ポイント

 一般外来における結核が疑われる患者の早期把握と対応

 一般病床において結核患者が発生した場合の的確な対応

 高齢者等の結核易発病群に対する注意

 気管支鏡検査室、細菌検査室、採痰室、病理検査室(剖検室)での結核 を想定した対応

2.結核病床(棟)での具体的な対応

(1)結核病床(棟)での対応の基本的考え方

(21)

20

(2)確実な治療と多剤耐性結核の発生防止

・ 結核病床(棟)での院内感染対策において重要なことの一つとして、適切な化学療法により 患者の菌陰性化を図ることである。特に、薬剤耐性結核の治療は困難であり、耐性菌による 院内感染が起こった場合の対応はさらに困難なものとなる。そのため、耐性菌を作らないた めに、確実な治療と脱落防止が重要である。

・ 厚生労働省の定める「結核医療の基準」(平成21年厚生労働省告示第16号)に基づき、有効 な化学療法が行われれば、菌陽性患者の排菌量は対数的に減少し、咳の回数も著明に減 少するので、感染性は急速に低くなっていく。

(3)病室・病棟、検査室の運営

・ 病棟、病室の構造設備上のポイントについては、第2部に記載したとおりであるが、新たに入 院した患者はまず個室に収容して治療し、感染性が低くなってから大部屋に移すようにする ことが望ましい。患者の感染性が高いと考えられる場合(喀痰塗抹検査で菌量が多い、呼吸 器症状が強いなど)や多剤耐性菌である可能性がある場合には、特に十分な配慮が必要で ある。

・ 院内における共用の検査部門においては、結核患者(及びその疑いのある者)はその日の 最後に検査を受けさせるような配慮も重要である。

・ 喀痰塗抹検査で陽性の間は、食事は配膳として患者は食堂や談話室に出ないことが望まれ る。検査なども可能な限り病室内で行い、やむをえず室外で行う場合には患者にはサージカ ルマスクの着用が必要である。(この場合は、飛沫の飛散防止であることから、N95型マスク でなくサージカルマスクでよい。)

(4)職員の感染防止と患者指導

・ 職員は結核感染のリスクの高い部屋や区域に入るときにはN95型マスク又は同等のマスク を適切に着用することが重要である。面会者に対しても、N95型マスクの着用を指導する。

・ 患者は原則として病棟外に出ることは制限されるが、検査等でやむを得ないときにはサージ カルマスクを着用する。職員や面会者との面会時も同様である。

表16.結核病床(棟)での具体的対応のポイント

 一般の医療機関での対応策の実施

 菌陽性の新入院患者を初め2週間程度収容する部屋(個室)の確保

 多剤耐性結核の患者を収容する部屋(陰圧個室)の確保

 菌陽性の患者を収容する病室の扉は閉めておくこと

 菌陽性の患者が病室から出る時にはサージカルマスクの着用

 菌陽性の患者の病室に職員が入る場合にはN95型マスクの着用

(22)

21

3.精神科病棟での具体的な対応

(1)精神科病棟における結核の特徴と対応の基本的考え方

・ 精神疾患を持つ患者は自覚症状の訴えに乏しく、喫煙者が多いとの指摘があり、重喫煙者 は普段から咳・痰を持っているため症状が認識されにくいことから、結核の診断が遅れる場 合がある。

・ 精神科病棟は、閉鎖的な環境で療養する場合があること、ホール等での多数の患者との交 流の機会のあること、徘徊癖を持つ患者が多くの患者・職員と接触することがあることから、 周囲の患者や職員に結核を感染させる危険に一層の注意が必要である。

・ 認知症などの合併症を持つために、ADLが著しく低下している高齢者は免疫が低下している 可能性があり、再感染が起こりうる。

・ このため、入院患者が結核に罹患している可能性について十分な注意や配慮がなされてい ないと重大な集団感染事件に発展する場合がある。

・ 精神科病院の管理者は、入院患者の結核予防と早期発見に関して特別の注意を払う必要が ある。

表17.精神科病棟での結核集団感染の特徴

 患者が感染源の場合が多い。

 長期入院患者に結核既感染の高齢者が多い。

 患者発見が遅れ、多くの患者が発生することが多い。

 患者が症状を訴えないことが多い。

 病棟・病室等が閉鎖されていることが多い。

 患者が1か所に集まっていることが多い。

 胸部X線検査の読影に慣れた医師が少ない。

 対応が難しいことがある。

 専門機関への受診が容易にできない場合がある。

 検査の実施が容易でない場合がある。

 潜在性結核感染症治療の実施も困難な場合がある。

(青木による記述

21)

を改変) (2)患者の早期発見

・ 入院患者、特に長期に入院する患者は感染症法による定期の健康診断を受けられない場合 がある。病院ではこの点を十分に考慮して、高齢等の発病リスクのある患者には年1回は健 康診断を受けられるようにする。また、症状に乏しい場合もあるので、特に呼吸器症状の有 無に常々十分な注意を払うとともに、検温・食事摂取量の確認は毎日行う。患者の身体症状 の異状に気づいた場合には、直ちに胸部X線検査および結核菌塗抹検査を含む活動性結核 の有無の検査を行うことが重要である。外来受診中の患者についてもこれに準じた診療上の 配慮が必要である。

(23)

22

(3)組織的取り組み

・ 精神科においても、結核予防対策は施設全体として体系的におこなうことが重要である。感 染対策委員会(ICC)、感染対策チーム(ICT)では必ず結核を対象疾患の一つとして採り上げ るべきである。

(4)保健所との連携

・ 入院患者や職員が結核と診断された場合には、直ちに所轄の保健所と協議を行い、連携の もとに適切な措置を講じることが必要である、特に、精神病院に入院中の患者が結核と診断 され、その患者を結核病院へ転院させた場合であっても、診断した医師は感染症法第12条に よる届出を行う必要がある。

・ 感染性のある結核患者は、結核病床を有する医療機関に移さなければならないとされている が、原疾患の病状など緊急その他やむを得ない理由から直ちに移送することが困難な場合 には、院内で他に感染を及ぼす恐れがないような条件が整った区域に患者を収容する。この 場合にはその事情を、患者発生届けに併せて所管の保健所に報告して協議することが重要 である。

表18.精神科病棟における結核院内感染対策のポイント

 入院時に胸部X線検査を行い、異常(所見)の有無を評価して記録を残す

 年1回は胸部X線検査を実施する

 看護職員等は患者の咳に注意し、咳が続く場合は主治医あるいはICTに報告し、胸部 X線検査及び喀痰結核菌検査を実施する。

 換気回数は可能な限り十分に確保する。

 結核患者が発生した場合は保健所と密接な連携が不可欠

4.矯正施設での対応

矯正施設(法務省所管の刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所)は、行動の制

限を伴う集団生活を営む場として、結核の発生に関して特別の注意を払う必要がある。

(1)患者の早期発見

・ 被収容者が遷延する呼吸器症状(特に、2週間以上持続する咳・痰)を訴える場合にはできる だけ早期に医師の診察を受けさせる。

・ 感染症法第53条の2、同施行令第11条に基づき、刑事施設(刑務所、少年刑務所、拘置所) の長は、20歳以上の者の収容にあたって胸部X線検査などを含む結核の有無に関する健康 診断を行う。また、収容後は定期の健康診断を行い、健康診断の結果(施設の所在地、実施 の年月、受 診 者 数 、 発 見 さ れ た 患 者 数 等 ) を保健所長に報告する。

(24)

23

(2)患者発見時の対応

・ 結核患者の発生時には、第2部に記載した内容を基本として対応する。ただし、患者の収容 先の決定については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律等の規定があ るため、一律に入院勧告(感染症法第19条)が適用されるわけではなく、その都度に施設の 長と保健所長が協議を行う。

・ 結核病床以外に収容する場合には、第2部の中の「構造設備と環境面での対策」に準じた施 設内感染防止策が必要である。

・ 結核治療を受けている被収容者が施設を出ることになった場合には、施設長は所轄の保健 所と協議して結核治療が確実に継続されるよう、患者が適切な医療機関を受診するよう配慮 することが重要である。

(3)保健所との連携

・ 被収容者又は職員が結核と診断された場合には、ただちに所轄の保健所と協議を行い、連 携のもとに接触者健診を含む適切な措置を講じなければならない。

・ 矯正施設と保健所は平常時より情報交換を行い、患者発生時に円滑に治療完了が得られる ように相互協力することが望まれる。

表19.矯正施設における結核施設内感染防止のポイント

 職員等は被収容者の咳や痰に注意し、長引く(2週間以上)場合は胸部X線検査及び喀痰 結核菌検査の実施

 刑事施設においては、感染症法に基づき20歳以上の者に対して、入所時に胸部X線検査 を行い、異常(所見)の有無を評価・記録を残しておき、年1回は胸部X線検査を実施する ことが不可欠

 換気回数は可能な限り十分に確保する

 結核患者が発生した場合は保健所と密接な連携が不可欠

5.高齢者施設での対応 (1)基本的な考え方

 高齢者の入所施設は、既感染者が多いために比較的高い罹患率を持つと同時に体力の低

下に伴って免疫が低下している人が含まれる年齢層の人々が集団生活を営む場であり、健 康管理の上で結核の発生に関して特別の注意を払う必要がある。

(2)患者の早期発見

(25)

24

れないということにならないよう配慮することが望まれる。

・ 入所後は、感染症法施行令第11条に定められた施設(社会福祉法第2条第2項第1号及び第

3号から第6号までに規定する施設:生活保護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、

軽費老人ホーム、身体障害者更正施設、身体障害者療護施設、身体障害者福祉ホーム、身 体障害者授産施設、知的障害者更正施設、知的障害者授産施設、知的障害者福祉ホーム、 知的障害者通勤寮、婦人保護施設)の場合には施設長の責任において入所時及び年1回の 定期健康診断を行う必要がある。また、同法における位置づけのない精神科病院をはじめと する病院、老人保健施設やその他の入所施設については、「結核に関する特定感染症予防 指針」に「施設の管理者は必要に応じた健康診断を実施することが適当である」と記載されて いる。入所者の健康管理及び施設内感染防止の観点から、同様に入所時及び年1回の定期 的な健康診断を行うことが望まれる。

・ 健康診断の結果、活動性結核の可能性があると判定された者については精密検査を確実に 実施する。

・ 入所者が遷延する呼吸器症状(特に、2週間以上持続する咳・痰)を訴える場合、できるだけ 早期に医療機関を受診させる。高齢の結核患者の中には、呼吸器症状がなく、発熱や倦怠 感、食欲不振、体重減少を主訴とする者が少なくない。特に結核発病の危険因子(糖尿病、 悪性腫瘍、免疫抑制剤治療など:「付録」を参照)を合併する高齢者にこのような症状がみら れた場合は、早期に受診させ、結核の鑑別診断を念頭に置いた検査の実施が望まれる。

・ 高齢者施設では、入所者の体重測定を定期的に実施し、その結果を記録する際には前回の 測定値との差も併記するなど、入所者の体重減少を察知するための工夫も必要である。

(3)組織的取り組み

・ 結核予防対策は施設全体として体系的に行うことが重要である。

・ 保健衛生問題のための組織(例えば「施設内感染対策委員会」といったもの)には必ず結核 を対象疾患の一つとして取り上げるべきである。

(4)職員の健康管理

・ 職員の健康管理としては定期の結核健康診断が行われるが、職員全員が受診するように組 織的な配慮が必要である。

・ 職員には、入所者及び職員自身の結核感染の予防法、結核発病時の対応等について常日 頃から教育を行っておく必要がある。

・ 毎年のように結核患者が発生するような施設・職場では、接触者健診に備えて採用時の健 康診断でIGRAを実施することが望ましい。免疫抑制状態の患者や発病リスクが高い者を受 け入れる場合にはなおさらである。

・ 結核患者発生時には患者に接触しなければならないことに備えて、N95型マスクを常時備え、 保管場所・使用法を職員に周知しておくことが望まれる。

(26)

25

・ 入所者あるいは職員が結核と診断された場合には、直ちに所轄の保健所と協議を行い、保 健所長と連携のもとに接触者健診等の適切な措置を講じなければならない。

表20.高齢者施設における施設内結核感染防止のポイント

 入所時に胸部X線検査を行い、異常(所見)の有無を評価し記録を残す。

 年1回は胸部X線検査を実施することが不可欠であ る(感染症法の法定外であ るが、 「特定感染症予防指針」には健康診断に関する記載があり、感染対策上重要)。

 職員等や入所者の咳・痰に注意し、長引く場合(2週間以上)は胸部X線検査及び喀痰 検査を実施する。

 呼吸器症状がなくとも、発熱、食欲不振、体重減少等の全身症状がみられる高齢者に は、胸部X線検査を実施、必要があれば、喀痰結核菌検査を実施する。

 換気回数は可能な限り十分に確保する。

 結核患者が発生した場合は保健所と密接な連携が不可欠。

6.その他の入所施設での対応

 その他の入所施設においても、集団生活を営む場として健康管理の上で、結核の発生に注

意を払う必要があり、高齢者入所施設での対応を参考にされたい。

 感染症法施行令第11条に定められた施設(表21)の場合には、施設の長が定期の健康診断

を実施することとなっている。患者発生時には保健所と十分な連携をとり、指示に従って対応 を行う。

表21.施設の長が定期の健康診断を行う施設(感染症法施行令第11条)

(1) 刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)

(2) 社会福祉法第2条第2項第1号及び第3号から第6号までに規定する施設

(生活保護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、身体障害者 更正施設、身体障害者療護施設、身体障害者福祉ホーム、身体障害者授産施設、知的 障害者更正施設、知的障害者授産施設、知的障害者福祉ホーム、知的障害者通勤寮、 婦人保護施設)

7.通所施設での対応

・ 通所施設、特に高齢者や障害者の関連施設では、利用者が結核を発病することが決してま れではない。施設では日頃から利用者の健康状態に関する情報を把握するように努めること が重要である。例えば、通所開始時または年1回、必ず健康診断書または市町村が実施した 最近の定期健診結果を求める、咳・痰が2週間以上続くときは必ず嘱託医の診察と胸部X線 検査や喀痰検査を受ける、などが考えられる。

(27)

26

【参考文献】

1) 青木正和.飛沫核感染.医師・看護職のための結核病学.青木正和著、森亨追補. 平

成24年改訂版1.基礎知識.東京: 公益財団法人結核予防会. 2012; 11-25,

2) 青木正和.再感染発病.医師・看護職のための結核病学.青木正和著、森亨追補. 平

成24年改訂版1.基礎知識.東京: 公益財団法人結核予防会.2012; 65-72

3) 青木正和.BCG未接種者の初感染発病.医師・看護職のための結核病学.青木正和著、

森亨追補. 平成24年改訂版1.基礎知識.東京: 公益財団法人結核予防会.2012; 42

4) 青木正和.BCG既接種者の初感染発病.医師・看護職のための結核病学.青木正和著、

森亨追補. 平成24年改訂版1.基礎知識.東京: 公益財団法人結核予防会.2012; 4

5) 結核の統計2013.東京: 公益財団法人結核予防会.2013; 62

6) 青木正和.結核院内感染増加の要因.結核の院内感染 改訂版,青木正和.東京: 財

団法人結核予防会.1999; 10

7) 青木正和.わが国 での病 院での結核集団感染 事 件.結核の院内感 染 改 訂版,東京:

財団法人結核予防会.1999; 3

8) 日本結核病学会予防委員会・治療委員会.潜在性結核感染症治療指針.結核2013; 88:

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9) 青木正和.特定の職場あるいは条件下での感染.結核の院内感染 改訂版,東京:財団

法人結核予防会,1999; 34-36

10) 青木正和.院内感染防止策.結核院内感染防止ガイドライン.東京: 財団法人結核予防

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11) 日本結核病学会予防委員会: 医療施設内結核感染対策について.結核2010; 85: 477–

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13) 青木正和.BCG再接種に ついて.医師・看護職のための結核病学平成20年改訂版 5.

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15) Pai M, Joshi, Dogra et al. Serial testing of health care workers for tuberculosis using

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16) Pai M, Joshi, Dogra et al. T-cell assay conversions and reversions among household

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18) Ringhausen FC, Nienhaus A, Costa JT et al. Within-subject variability of Mycobacterium

参照

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